極めて不自然に、まるでそれが自然なことのように

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「特に用はないわ。ただ、顔が見たくて」 上品な笑みを浮かべながらレオは言った。 不気味な程に清楚に見えた。 「恋人じゃあるまいし」 そうミズヤが言うとレオは近づいて、 「人殺しに普通の恋人なんかできないわよ」 と言った。 「誰も知られなければその事実は存在しないのと同じさ。現に僕は普通の学生としてここにいる」 ミズヤは睨んで言い返した。 憎悪がとぐろを巻いていた。 殺してしまいたいが殺せる自信が無い。 首は前失敗したから今度は心臓を狙うか、いや、胸骨は人が思う以上に頑丈だ。 刃は止まるだろうし、何よりこいつは自分のことを人殺しだと認識している。 つまり不意がつけない確率が高いということだ。 ミズヤは唇を噛むしかなかった。
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