パラノイアの咲く季節へと

極めて不自然に、まるでそれが自然なことのように

　ミズヤはエホバの終末論的な教義が嫌いだ。

世界はもうすぐに破滅する。

だから最善は個人の幸福に有り。

要約すると彼らの教義はこうなるのだ。

　ミズヤの父親はその教義に従って、ミズヤの母親を殺した。

母はエホバの信者ではなかったが、父を愛していた。

そのために父の賭け事に関する負債の一切を背負う羽目になったのだ。

金は人の心を壊す引き金となる。

ふとした喧嘩でその引き金は引かれた。

力の強かった父は母をミズヤの目の前で首を絞めて、そして氷剣で何度か刺して残虐に殺した。

そして母の次の標的は目撃者であるミズヤとなった。

父親は血だらけになった姿で、狂った三白眼で息子を見つめ、地獄からの唸りのような声をだして氷剣を振りかざした。

しかし、それは、一瞬だった。

ミズヤの放った氷剣が父親の首を貫通したのだ。

ミズヤは母親が殺されて、現実が現実でないようなおかしな気分になっていた。

だからこの攻撃は驚くほど迅速だった。