月のお姫さま

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 琴の音色は、もの悲しいこと限りないのに、聞く人を惹きつけてやまないのです。  美しく、おごそかで静かな、粛々とした旋律でありながら、姫の溶けないわだかまりを激しく物語り、哀切を感じずにはいられないのです。  それは、自分の気持ちと同調させる、一種の魔法でした。姫自身は、そんなことはつゆ知らず、いつも琴を奏でます。 そして、民衆は姫の癒えない心を受け止めようと聞くのでした。 月姫様、お痛わしいと。
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