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「で、できれば、できればでいいのですけど、人の姿とやらになってほしい……かもしれません」
私の中での結論はそうなった。
これが本心だと思う。
嘘をつくのは苦手だし。
というか黒歴史はゴメンだし。
「ほ……本当はなりたいのですが、恥ずかしながら人型になるための【指輪】を忘れてしまったようで…」
ただのうさぎのぬいぐるみ(←重要)なので、細かい表情はわからないけど、声音が今にも泣きそうに震えていた。
そして沈黙が続く。
私は、
「指輪で人型になれるなんてファンタジーだなぁ」とか
「人型のヤトさんはどんな感じなんだろう。話し方的に……眼鏡の爽やか文学青年で、でも眼鏡をとると鬼畜に……!?」
とかそんな事ばかりを考えていた。
今思えばそうとう重症です。
すると唐突にヤトさんが言った。
「……お願いがあるのですが聞いていただけますか?」
すごい可愛い顔してみつめてくる。さすが私のぬいぐるみ。
反則でしょ…。
「うっ……はぁい。」
そして、私はお願いされると断れないタイプの人なんです。
いつも二つ返事で承諾し、それから内容を聞いて後悔する事が多いのに……。
また内容を聞く前に、返事をしてしまった……!
「僕がなくした指輪を作ってくれませんか?!」
…………。
………………………。
指輪って作れるの?
いや、シルバーアクセサリーが作れるキットはホームセンターに売ってたけど……。
しろつめ草の指輪とかなら、昔作ったから作れるよ?
……でもさ。
私、そんな不思議な指輪なんて作れないよね?
ただの村人Aだよ?
魔力(?)とかMP(?)不思議な力とか持ってないよ!
いや、もしかしたら私は魔女?魔女なのかも!?
じゃあ、おジャ魔女カナ?アクセサリー屋さんやる?
…んなわけない。
いきなり黙った私を心配そうに見上げるヤトさん。
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