第2話 エキセントリックな少年

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「やあ、おはよう水橋さん」 「ゲッ……!」 会わないだろう、そう思っていたのに。 私が3組で関根はるかは4組。 3組と4組はトイレを隔てているから教室が遠い。 だからそんなに会うことは無いだろうと思っていたのに。 何でこいつ私の教室の前にいるの? そして、なんでにこやかな笑顔で私に挨拶してきてるの? その笑顔は昨日私が「関根くん」と呼んでいたときのそれで、人殺しの顔はしていない。 寧ろ、聖母マリアも眩しさで思わずサングラスをかけてしまうような、後光の差す微笑をたたえている。 初めてみた時はクラッとするほどの笑顔だったけど、今はその後ろにある顔が見え隠れしててそうはならない。 でも挨拶を返さないのは気分が悪いから。 「……おはよ」 「どうしたの?今日は暗いね。」 「アンタねえ、誰のせいだと……ッ!」 文句を言おうと関根はるかを睨み上げたとき、いきなり肩を捕まれて耳元でボソッと囁かれた。 「昨日のことバラすなよ」 それだけ言って、関根はるかはさよならの挨拶のつもりなのか片手を挙げて去っていった。 というか、昨日のことって、「関根はるかの本性」と「古屋先輩を好きなこと」と「私をひっぱたいたこと」のどれなのよ。 とにかく、関根はるかに関する余計なことは言わないほうが良さそうだということだけはよーく分かった。 私の耳元に囁いた声がまたドスのきいたそれだったからね…全く、あの変わり身の早さには驚かされる。 あいつも軽音部にはいるのか。 ……って、顔合わせまくりじゃないの!
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