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「おっはよー!」
「おわっ!」
突然肩を叩かれたせいで、思わず大きな声が出る。
焦って振り向くと、見慣れた顔があって、一瞬で私の緊張やら何やらは飛んでいった。
「びっくりしたー……凛かぁ、おはよう」
振り向いた先に満面の笑顔で居たのは、私の昔からの幼馴染で、親友の、野中凛だった。
チビな私と違って、背が高くスラッとした凛は、頭の右側で高く結っているサイドテールがよく似合う、目鼻立ちのはっきりとした美人な子だ。
しかしその反面、昔から木に登ってぶらさがったり、結んだ蛇を岩にぶつけてゲラゲラ笑ったりと、中々ぶっ飛んだ性格だったりもする。
しかし、そんな凛のカラッとした性格のおかげか、今でも大したケンカ無しに付き合っている。感謝感謝だ。
「凛かぁ、とは何よ!失礼な!」
「ちょっとびっくりしちゃってさ。ごめんね」
「私もびっくりさせちゃってごめんねなんだけど……ちょっとスミレ、あんた今日さえない顔してるね。どしたの?」
「ん……ちょっとほら、勉強疲れってやつ!」
「スミレは頑張り屋さんだからねぇ……ま、無理はしなさんな。ね」
「ん、ありがと」
ポンポンと私の肩を叩いて、凛がにっこりと笑う。
その笑顔の前に、私の心は凛に本当のことを言ってしまいたい気持ちでいっぱいになった。
関根はるかのことも、昨日の出来事も全部、洗いざらいぶちまけてスッキリしてしまいたい。
でも、関根はるかの恐ろしい阿修羅のような顔と、ドスのきいた声がチラついて怖気づいてしまう。
元々、この高校よりも1つランク下の高校に行くつもりだった凛は、更にもう1つ下のランクの高校に行くと言っていた私が、急にこの高校へ行くことにしたのを聞いて、「それなら私もチャレンジする」と進路を曲げてくれた親友である。
そこまでしてくれた(いや、してくれたは自惚れかも……)親友に、隠し事をするのは心苦しい。
でも、関根はるかの毒牙が凛に向くのはもっと嫌だし、困る。
火の無いところに煙は立たず、とも言うし、この件については騒ぎ立てないほうが賢いかも。
そう思い、えへえへと笑顔を返しながらお礼を言う私の耳に、凛が顔を寄せた。
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