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私は、凛が入るとしたら運動部を選ぶと思っていたから、一緒に部活ができるというのは飛び上がるほど嬉しい。
実際に、中学生の時は、凛が運動部で私が文化部だった。
そこで3年間部活に励み、燃え尽きた凛は、高校に入ったら絶対帰宅部員になるとよくこぼしていた。
だから別に、一緒に軽音部に入るのは何の問題でもない。
問題は、軽音部に関根はるかが居るということだ。
「……どうしたのスミレ、顔色悪いよ?」
「そっ、そんなことないよ!気のせいじゃない!?」
関根はるかが、私の「親友」という理由だけで凛に手を出さないか死ぬほど心配だ。
もしくは、私が凛に関根はるかの秘密を話したと勝手に思い込まれて、凛が口封じに何かされないか、ということも心配である。
凛は私と違って美人だから、ぶん殴られるかわりにヤラれちゃったりするかもしれない。
いや、関根はるかは、古屋先輩のことが好きらしいから、女子には興味がないか。
それなら襲われる心配は無いか……と、思いたいけれどあの性悪裏表男のことだ、信用はできない。
「もしかして、私がスミレに内緒にで軽音部に入ったこと……怒ってる?」
難しい顔をしていた私に、凛が不安そうな声でそう尋ねる。
「そんなわけない!凛が一緒で、私、すっごく嬉しいよ!」
「本当?怒ってない?」
「神様に誓って!」
凛の手をとって強く握り、大きく頷く。
それと同時に、朝のホームルームを告げるチャイムが鳴った。
それぞれのグループが崩れ、みんなばらばらと席に戻っていく。
「うん。分かったよ、スミレ」
そんな中、凛がにっこりと笑って手を振り、席に戻ろうとする。
私は離そうとする凛の手を握ったまま、目を見つめ、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「凛は、私が絶対守るから」
全ては、単なる私の思い過ごしかもしれない。
関根はるかも、古屋先輩さえ絡まなければ、そんなに嫌なやつじゃないのかもしれない。
だけど、あいつの昨日の豹変は紛れもない事実で。
裏表ありまくりの、良く言えば「不思議くん」、悪く言えば「変人」あるいは「奇人」の、関根はるか。
私が、親友の凛を守り抜かなければ。
あの、エキセントリックな少年から。
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