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そして、暇な授業が終わって放課後。
その日は、移動教室やトイレに行くたびに4組がやたらと騒がしいのが気になった。
恐らく関根はるか目当てで集まっているんだろう。
ああ、許されるならあの集団の中に飛び込んで、あいつの本性を大声で叫んでやりたい。
どうせ、誰も信じてはくれないだろうけど……とほほ。
「それじゃ、スミレ。お先に!」
「うん、凛も頑張ってね。バイバーイ!」
「おー、頑張る頑張る。スミレもね。それじゃあ!」
家の手伝いがあるから、という理由で先に帰る凛に手を振り、先生に頼まれたクラスの座席表をささっと仕上げて、私も帰ろうと席を立つ。
放課後間もない学校はまだ生徒がたくさん居るのかそれなりにがやがやとしていて、玄関や下駄箱の周りにも何人かグループがたまっていた。
それを眺めつつ、私は下駄箱を開ける。
冷たい鉄でできていて、ねずみ色でさびたそれは鈍い音と感触とともに、ギギギ、と開いた。
「……え」
中心を鉄板で仕切られている下駄箱の、下段に置いてある私のローファーの片方に、ぐしゃぐしゃに折ったルーズリーフが突っ込んである。
それはもう丁寧のカケラもない悲惨な折り方で、いっそ丸めたと言った方が良いんじゃないかという代物だった。
私は恐る恐るそれを手に取り、まだちらほらと居る生徒たちに怪しまれないように、下駄箱の陰に回りこんだ。
そしてルーズリーフをしげしげと見つめ、その、ゴミか手紙か区別を付けるのに大変苦労しそうなそれを、開いてみる。
入学早々呼び出しとかだったらどうしよう……番長とか、この学校には居るのかな。
「ゲェッ!」
思わずもれた、カエルが潰れたような声。
しかし、これがもらさずに居られようか。
ルーズリーフには、どうやって書いたんだと聞きたくなるほど丁寧な字で、こう書かれていた。
“これ読んだら昨日の教室まで走って来い”
“関根はるか”
今、最も、見たくも聞きたくもないない名前。
関根はるかの名前がそこにあった。
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