第1話 ロックンロールな出会い

3/11
前へ
/204ページ
次へ
私の名前は、水橋スミレ。高校1年生。 顔普通、学力普通、そしてチビの3拍子揃ったマンガの脇役のような私が、自分の偏差値よりも高いこの高校に入れたのは、奇跡に近かった。 それもこれも、全ては軽音部に入部するため。 もとい、軽音部に入部して中学生の時に一目惚れした古屋賢二先輩とお近づきになるため。 そのために、元旦を机と向き合って過ごしても、ノイローゼになって嫌気のあまり部屋の障子に穴を開けまくっても、ストレスの夜食ヤケ食いが祟ってお腹を下し、体重が激減しても、私は勉強をし続けた。 自分の馬鹿な頭に鞭を打ち、古屋先輩のギターのフォームと、歌声を脳内でリピートしながら、とうとう私はやったのだ。 先輩と一緒の高校に合格した。 喜びで、激減した体重が戻ってしまったことはもはやどうでもいい。 古屋先輩に会える! 古屋先輩と一緒に部活が出来る! 高校入学3日目、そんな緊張と期待が入り混じって、どきどきする心臓が口から飛び出しそうになりながら、私は軽音部の部室の扉を、思いっきり開けた。 「……あれ?」 そこに、古屋先輩は居なかった。 古屋先輩どころか、他の先輩の姿も無かった。 そのかわりに。 「……君も、入部希望?」 物凄く顔が綺麗で、物凄く背が高く、物凄く足の長い、まるで少女マンガから抜け出てきた王子様のような男の子が、机に腰掛けながら、そう声をかけてきた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1869人が本棚に入れています
本棚に追加