第1話 ロックンロールな出会い

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関根くんに気を遣わせて質問ばかりさせるのも悪いと思って、私からも思い切って質問をしてみた。 「入部しようと思った、理由?」 「う、うん!」 私自身が軽音部に入りたいと思った動機は、古屋先輩とお近づきになりたいというよこしまな理由が90パーセントを占めていたりする。 けれど、残りの10パーセントは、歌うことが大好きだという純粋な理由からできている。 普通の塊でできた私が、唯一好きで、ちよっとだけ得意なことが歌うことだった。 だから、軽音部に入って、同じく歌うことが好きな人と出会えたり、いろんな楽器を実際に目で見て触れたりして、自分の世界を広げたい。 それが私の、よこしまとちょっとの希望を込めた入部理由だ。 人に聞かれたら、10パーセントの方を答えるしかないんだけどね。 「えっとここにも書いてあるんだけど、先輩に憧れて……」 しまった、入部届けに入部希望理由が書いてあったのか。 ……今、関根くん何ていった? 「せっ、先輩!?」 「うん。中学3年生のときにここの高校の軽音部のライブを見て、凄くカッコイイ先輩が居たんだ。その先輩に憧れて、高校もここを受験したし、軽音部にも入ろうって思ったわけ」 ええええええええ!! まさか! まさか、そんなまさか関根くんも私と同じ入部理由だったなんて!! ……いや、でもまだ古屋先輩に憧れて、というわけじゃない。 そもそも憧れているという理由は色恋で入部したいと思っちゃってる私に比べれば純粋で、私と一緒にしちゃうのは申し訳ない気がする。 あと、こんなキレイな人と自分を一緒にしたら駄目だ。 「あれ、水橋さんももしかして……一緒だったりする?」 「えっ、な、何が!?」 「入部理由。さっき俺が先輩に憧れてって言ったら、顔が凄く輝いたみたいだけど……」 やばい、ばれた。
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