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入部理由の、よこしまな90パーセントの方が、ばれてしまった。
いやいや、まだ完璧にばれたわけじゃない!
誤魔化すんだスミレ!
全身全霊で、誤魔化すんだ!!
「そっ、そんなんじゃないの!私はただ、そ、そう!歌!ううう、歌が、歌が好きで!大好きで――……ッ!」
「嘘、でしょ?」
いきなり、視界がぐるりと回った。
ぐるりと回ったということは部室の薄汚れた天井が見えるはずなのに、今視界いっぱいに見えるのは、あのキレイでキレイで惨めになるくらいの関根くんの顔で。
え、関根君の、顔?
「ひっ……ぎゃああああああ!!」
なんということだろう。
関根くんが、私を、机の上に押し倒してる。
私は、関根くんに、机の上で押し倒されている。
押し倒されて、いる。
何で!?
「水橋さん、嘘ついてるでしょ?」
「うううう、う、嘘なんか!」
「ついてるでしょ?目、逸らさないでよ」
「ふぎゃっ!」
関根くんのキレイな顔をアップで見ていることとそんな関根くんに押し倒されていることに耐え切れず、押し倒されながらも必死に横を向いていた私のあごを、関根くんが掴んで、正面に向けさせた。
あごに触れる関根くんの手は、作り物みたいにキレイな関根くんとに反して、意外にあたたかかった。
でも、今はそんなことを考えている場合じゃない。
この状況を、何とかしなきゃ!
じゃないと私の心臓が先に死んでしまう!
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