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俺ははじめ、冗談かと思った。
今日だからこんな冗談を言うのかと思った。
だけど、なんかホントに歌菜が自殺をしてしまうのではないか、とそんな気がした。
そのことがあったっては困る。
嫌、困る所の問題じゃない。
俺はバイトなんて忘れて、の裏口から抜け出した。
置き手紙には乱雑な字で
『クビでも構いません
彼女が自殺みたいなことしそうなんで、止めてきます』
と書いて、走った。
走ってる間、歌菜に何度も電話した。
でも出なかった。
それでも諦めなかった。
そしたら、何十回もかけた時、
歌菜が電話に出た。
けれど、すぐに切られた。
一瞬戸惑ったけど、歌菜がまだ生きていることが分かっただけで、それだけで良かった。
それからも諦めずに、電話のコールを鳴らし続けた。
歌菜は時折電話に出てくれる。
でも何も話してくれない。
ただ通話ボタンを押して、携帯を放置しているみたいに。
歌菜の声は聞こえず、周りの雑音だけが聞こえる。
その雑音の中に、聞こえた。
歌菜の居場所がわかるヒントが。
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