序章

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『今は昔、竹取の翁といふ者ありけり…』 この冒頭で始まるのは、この日本で生まれて、生きている人間なら知らない者などほとんどいないだろうと思われる、とても有名なお話、『竹取物語』である。 小さい子供には分かりやすいようにか、この物語の主人公である月の姫、『かぐやひめ』とタイトルされている。 作者不明で、平安時代の最初の頃に作られた、この国最初の物語だ。 竹から生まれた月の姫が主人公、というのを昔の人が考えて創ったのだから、不思議だ。 いや、不思議な事を信じていた昔だからこそ、想像豊かな人が多く、現代に語り継がれる話を創り出せたに違いない。 しかし、この物語はハッピーエンドの話ではない。 むしろバッドエンディングではなかろうか…。 何しろ、月の姫を育てた竹取の翁とその妻の媼、姫を愛した帝は、姫を地上に留め置くことが出来ず、月に帰してしまったのだから…。 この物語は神秘であり、謎が多く、奥が深い。 帰らないで側にいて欲しいと願った帝の想いは月の姫には届かなかったのだろうか? 月の姫は何故月に帰ってしまったのだろうか? 帝と姫の想いは重なる事がなかったのだろうか…?
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