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「うおおおおおおおおおおおお!!!」
自転車を自動車並の速さでこぐ青年が一人。
「ち、こ、く、だああああああああああああああああ!!!!」
青年は黒髪でやや長め。
ワイシャツの襟下に緩くネクタイを締め、紺色のブレザー、灰色の学生ズボン。
見た感じは今時の普通の学生だが……。
「がああああ!!なんで自転車登校なんだあああ!!
狭い十字路で転校生とぶつかるイベントが起きないじゃないか!!」
実にオタクっぽいというか……。
現実から目を逸らしている。
「彼女欲しいいい!!」
しかも大声で負け犬宣言。
救いようが無い人物だった。
「どけどけええええ!!ウリィイイイイイ!!」
……この暴走気味の青年がこの話の主人公、
『旗士 桂馬(きし けいま)』
時雨(しぐれ)学院附属高等学校、略して学校に通っている、二年生。
因みに遅刻常習犯。
風紀委員のブラックリストに載るほどの実力者。
「入学式の日に遅刻かよ……。
これはまじやばいって……。」
意外に真面目な所があるみたいだが、
「新入生にオレの嫁候補がいるかどうか確かめられなくなる!!」
それは気のせい。
「くそ、学校に向かって全速前進DA☆」
どこの社長かも分からないような発言をして彼は爆走する。
「つ、ついた……ギリギリ滑り込みアウトだ……。」
彼は自分の教室まで歩いていき、ドアを開ける。
「おはようございます……。」
ドアを開けるとそこには……
「おう、桂馬。遅刻とはいい度胸してるな……。」
「げっ!?」
腕組みして待ち構える女性がいた。
「また谷が担任かよ!?」
「悪いか?
お前の頭がよければ、私もお前のような馬鹿とつるまなくて済むんだよ!」
「ひいいいっ!!」
彼にあれこれ怒鳴っているのはクラス担任、
『谷 周(タニ マワリ)』。
一部の生徒には姉貴と呼ばれる程の器のでかい教師だ。
彼は苦手なようだが……。
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