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「そいえば、そういえば…のどか、今日は寄らないの?」
思想を遮る形でかけられた梨花の問い掛けに私はうん?と慌てて返事をした。
「ほらほら、のどかのママさんお仕事忙しいから…
その、のどかがいつもご飯とか用意してるんでしょ? スーパーの買い出しとか、今日はいいの?」
「昨日まとめ買いしたばっかだし今日はこのまま帰るつもり。
母子二人暮らしだと、買いだめしすぎたら使い切る前に食材悪くなっちゃうからね」
私がそういうと梨花はそっかそっかと二度返事をした。
私が小学生の時親が離婚して、現在母子家庭で暮らしている。
理由は実に馬鹿げたものだ。
好色な父の身勝手な繰り返される浮気という情事。
収まることのないそれらの汚らわしい行為は、家庭とお母さんの心に、深い亀裂を残した。
勝手に蒸発した父が残していった物は、ボロアパートの借家と書き置きだけ。
わけもわからないままに、二人とり残された私とお母さん。
それからというものお母さんは女手一つで私を養う為、朝から晩までパート掛け持ちの働き詰めで帰りはいつも深夜になる。
高校規則でバイト禁止である以上、私に出来る事はせいぜいお母さんの変わりの家事くらいだからと、申し訳なさそうに渋る母の変わりにご飯の支度は私がしている。
あの時は子供心で察する事しかできなかったけど、今に思えばお母さんは相当苦労したとおもう。
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