◆戯れの帰路◆

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ヒラリ、と蝶が信号機から離れ、ふわふわと私のすぐ目前に舞う。 手を伸ばせば届きそうな距離… ふいにそれに触れたくなって私は、もうすこしだけ身を乗り出し手を伸ばした。 指先が蝶に触れそうになる。 後、数ミリ位の距離で… 蝶はまるで誘う様に、フワフワ私の指の周りを楽しそうに舞った。 「 のどかっ!!! 」 梨花の声がしたと思えば、ぐいと腕を強い力で捕まれそのまま後ろに引き倒された。 「っあた…!!」 派手に尻餅をつくと同時に、電車がガーッと激しい速度で目前を走り抜けていく。 梨花がしゃがみ込み、私の肩を抱いた。 「っもう…ボーっとしすぎぃっそんな身乗り出したら危ないじゃんか…っ」 「あ……」 蝶が…と言おうとして視線を戻したけど、その姿はどこにもなかった。 あ…あれ? 派手にこけたせいでマヌケな格好になったままの私は、ぼんやりと遮断機が上がった線路を眺めたまま何も言えなかった。 梨花は心配そうに大丈夫?と私のスカートについた砂を払ってくれた。 あれは、幻…? でも、確かにはっきり… 私は蝶がいたであろう場所から視線を離せないまま、いこうと梨花に手をひかれるがままにその場を後にした。
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