足音

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逃げていた。 「……はぁっ……はぁっ……」 ひたり、ひたり 私は、ひたすらに逃げていた。 何から逃げているのかはわからない。 黒々とした、一寸先も見通せない暗い道を、ただひたすら逃げていた。 ひたり、ひたり 後ろから追いかけて来る足音。 裸足の子供が歩いているような足音。 追いつかれたら、終わる。 何が、とも何故、ともいえない。 本能的に、追いつかれたらまずい事になるということを理解して、逃げていた。 ひたり、ひたり 相手は歩いているはず。 なのに、足音から判断できる相手との距離は縮まっていくばかり。 逃げなければ 逃げなければ 逃げなければ ひたり、ひたり ひたり、ひたり 逃げなければ 逃げなければ 逃げ……
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