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黒とのコントラストで映えるのは、アルの憧れる見事な銀色の髪。
何かを探し、紅いサファイアのような瞳できょろきょろ辺りを見回す彼女。
名前はマーシャ。
気が進まないハルの首を縦に降らすことができる、数少ない人物である。
《おおーーいっ! マーシャ!》
アルの声に気づき、安心した表情でハル達の方へ駆け寄るマーシャ。
こういう時、彼女を呼ぶのはアルの仕事だ。
彼女の声なら大多数は認識できない。
回りの注意を引かないことが重要だった。
外国人――――おそらく北欧系だろうが、彼女の容姿は無駄に人目にとまる。
いかにも映画に出てきそうな可愛らしい少女で、スクリーンから飛び出してきたような不思議な存在感があった。
それでもやはり一般人なので、注目されるのは苦手で上がり症持ち。
こういう場合、人間関係において大切なのは、いつの時代も思いやりの心なのである。
「おう、久しぶり」
立ち上がり、軽く手を挙げて挨拶するハル。
一日ちょっとぶりの再会だが、何日も会ってなかったような錯覚に襲われていた。
なんだ、寂しかったみたいじゃないか。
ついでに妙な敗北感にも襲われていたハルは、気のせいだと自分に言い聞かせている真っ最中である。
「…………」
マーシャが二人の前で立ち止まる。
たいした距離でもなかったので、息は上がっていないようだった。
「ええと…………」
《うん?》
「…………二人共、お疲れ様でした」
「…………ありがと」
《わたしはほとんど何もしてないけどね》
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