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言葉に詰まっていたことを考えると、彩夏から何か聞いていたのかもしれないが、ハルはあえて何も尋ねなかった。
持ち込む必要のない話だ。
しいて尋ねるとすれば、
「どうだった? 昨日のお泊まり」
「とても楽しかったですよ。みんなで銭湯にも行きましたし、 彩夏さんにお料理を教えてもらえましたし」
「ああ、あのくっさいのな。 結構うまかった」
「そ、そうですか…………ありがとうございます」
マーシャは明らかに動揺していた。
まさかハルが本当に食べるとは思ってなかったらしい。
彼女の中では、臭いを嗅いでごみ箱に向かうものだとばかり考えていた。
『それでマーシャ。 今日はどこで買い物するの?』
「そうですね…………やはり、いつものショッピングモールにしようかと」
「賛成。 この寒さで駅前の店をハシゴするのは堪える」
話がまとまったところで、タイミングよくバスがやってくる。
これに乗って十五分ほど揺られれば、件のショッピングモールに到着だ。
「もう昼は済ませちゃった?」
「ああ、いえ。 一度家に帰ろうと思っていたのですが、冬休み中のことで職員室に呼び出されてそのまま」
「よし、じゃあまずは昼飯だな」
《自分、さっき食べてたじゃん》
「あれは朝飯だ。 ちゃんと毎日三食食べるの」
幽霊が交じってはいるが、普通の会話。
彼らにとっての日常がそこにはあった。
一つ、彼らを監視する視線を除けば――――
◇
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