12月24日 お昼時

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グラスに口をつけたまま固まるハル。 日程的にはハルの推薦入試の方が後だった。 つまり先出しされた訳だが、彼の中ではある程度進路は固めていたけれど、極力口外はしていなかった。 成績から言えば妥協どころか手抜き。 職員室に呼び出されるのは面倒臭くてしかたなかったのだ。 「…………さては、姉さんだな?」 「どうでしょうね?」 「もうどうでもいい。 あと、いい加減に様はやめろ」 「はい、承知しました」 マーシャはしてやったとばかりに微笑んだ。 珍しくハルの負けだが、彩夏が黒幕では仕方ない。 《あっ、や~と見つけた!》 この幽霊も共犯だろうな。 そう考えると悲しくなるハルだったが、不機嫌そうなアルの顔を視ているとそれも自然と収まってしまう。 自分のプライベートでも、彼女の交友歓迎が潤せるなら安いものだ。 「お帰りなさい、アルさん。 映画はどうでしたか?」 《評判に騙されたわ、やっぱり日本の恋愛モノはダメね。 演技が臭くて鳥肌たっちゃった》 「お前が冷めてるだけだろ」 《失礼ね。 チャラい恋愛に共感できないだけよ。 わたしの心にぐっとくるのは、こう……命を懸けて大事なものを守る感じのやつ。 この前一緒に見たでしょ、ディファイアンス。 あれはよかったわ》 「いや、確かによかったけどさ。 恋愛モノとマイナーな戦争映画比べるのはどうよ?」 《うっさい。 マーシャはどう思う?》 「知らないだろ」 「いえ、原作なら読んだことがありますから。 私は感動しましたよ。 もう一人のシンドラー。 ああいう誰かのために必死になれる男性って素敵ですよね」 《でしょ? ほら、分かる人には分かるのよ》 「分からないとは言ってません」 そう言って立ち上がるハル。 自分の椅子をテーブルの横につけ、フロアの隅にある予備の椅子を取りに行く。 ひとまず退散して一呼吸おくと、椅子を持ってマーシャの対面に戻る。
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