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――――クリスマスイブ。
恋人達が愛を謳い、独り身さんが恨み節を連ねる世界的にもおめでたい日である。
クリスマス以上に盛り上がるイブの夜まで、まだまだ時間を残したこの日。
物語は、よく暖房の効いたボロアパートの一室から始まった。
「…………何、このくっさいやつ?」
こたつで待つこと数分。
目の前に出された異臭を放つ物体を前に、ツンツン尖ったヘアスタイルの青年は戸惑っていた。
彼の名前は久遠ハル。
そこそこ顔立ちが整っていて、かなり面倒見がよいのでそれなりに人望と人気がある。
彼の欠点であり、また長所でもあるのはシスコンだということ。
とにかくお姉ちゃん命なのだ。
そして今、仕事帰りの彼だが、所々こすれた跡のある黒いシャツと黒いパンツから、元気に地面を転がってきたことがわかる。
高校卒業までもう間もないというのに、まだまだわんぱくなところが抜け落ちないらしい。
「何って、野菜炒めじゃないですか」
当たり前だと言わんばかりに返したのは、彼の対面に座るお尻まで届きそうな髪の持ち主だ。
はっきりとした顔立ちに、小柄でほっそりとした体型。
年齢的には女性、と呼ぶのが正しいのだろうが、幼さを残した双眸や申し訳程度に整えた眉から、少女と呼んだ方がしっくりくる風貌の彼女は久遠彩夏。
名前からわかるように、ハルのお姉ちゃんである。
身長は、百七十センチあるハルの胸元に頭が届く程度で小柄。
今日は白のフードニットカーデに、スカートとレギンスを合わせている。
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