12月24日 お昼時

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「野菜炒めだってよ…………食べてみるか?」 ハルは箸でピーマンを摘むと、傍らでお行儀よく座っているキツネに差し出した。 可愛らしい見た目ではあるが、三本の尻尾がこの生き物が異様な存在であることを示唆している。 九尾、という生き物に分類されるであろうこのキツネの名前はくぅ。 本来なら九本あったであろう尻尾を切られ、弱っていたところをハルが保護して以来、家族のように扱われている。 「ふぅーーッ!!」 出会ってからそう日は経ってないものの、本当に、愛情を持って接しているのだ。 だから彼女が毛を逆立てて警戒しているのは、差し出しされたそれが料理にあるまじき異臭を放っていたからであり、ハルが嫌いだからではない。 毒味係じゃねぇんだぞ、などとは思ってないはずである。 「いらないか…………うん、美味しいね。 チリペッパー使ったのかな? ちょうどいい味付けだよ」 「そうですか。 じゃあちゃんと伝えておきますね」 そう言ってふんわり笑う彩夏。 いつも通りの情愛に満ちた笑顔だったが、ハルには一段と違って見えた。 まだ若干赤く腫れた彩夏の目。 ハルが帰宅してから、彼らはいろいろ話し合った。 彩夏は自分の生まれを――――ずっと秘密にしていた、彼女とハルが異父姉弟であることを打ち明けた。 そしてそれでも、ハルは自分の気持ちを、彼女を一人の女性として愛しているということを告白した。 結果は、二人の様子からなら察すことも容易いだろう。 彼らはお互いに、これからも一緒に生きていくことを誓った。 異父姉弟とはいえ民法第七三四条は相変わらず障害となるが、二人にとって書類上の婚姻関係などさして重要なことでない。 最高のエンディングを迎えたのだった。 「えっ、姉さんが作ったんじゃないの?」 「作ったのはマーシャちゃんですよ。 因みに、臭いの元は納豆です」 「…………」 昨夜自分の不在中に部屋に泊まったらしい、異国から来たクラスメートの名前に、ハルは微妙な表情を浮かべた。
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