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マーシャのお願いに、それなりにそういう意味があることはハルにだってわかっていた。
他人の感情には鋭い男だ。
鈍感じゃない。
とは言え、トラブルの種を放置しておく訳にもいくまい。
マナー違反だが、彼としてはアルを連れていくほかなかった。
「…………まぁ、今に始まったことじゃないしな。 お前は一緒に行こうな」
《えぇッ!?》
返ってきたのはいかにも不服そうな反応だった。
アルは頼み込むような表情で彩夏の目をじっと見つめる。
この態度。
ハルは視ていて嬉しかった。
女の子と遊ぶともなれば、いつも喜んでついてくるのに。
邪魔しに。
相手が仲のよいマーシャだからというのもあるのだろうが、結局彼女はハル本位なのだ。
ハルにとってマイナスになるような奴なら、徹底的に噛みついていく。
「私が代わりに、ちゃんと言っておきますよ。 一緒に楽しんできてください」
《彩夏まで…………》
「決まったな。 そんな残念そうな顔するなよ。 いつも通り一緒なだけだろ」
《気分じゃないの。 今は……そう、燃えてるの》
「ああ、充分過ぎるほどわかったよ。 じゃ、姉さん」
「はい」
「おかわり」
◇
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