始動

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「…随分と移動するなぁ」 そう言えば、ふと思ったのだが、今尾行中の2匹は同じ一番小さい期であるのに、最初に見つけたボテンに比べると口調がハッキリしていた。 若干の個体差があるとは聞いているが…。 そんな事を考えながらも、ペッドボトルを咥えた2匹のボテンを尾行して、もう40分以上経過していた。 …かなりの距離を移動して、郊外の砂浜と港のある集落の方まで来てしまった… 「…どこで何をするつもりだ。何を企んでいる…?」 もはや道も細くなり、街灯もまばらで、夜に人など歩いていない場所だ。 するとボテン達は、海岸の方へ下る非常に細い脇道へ入った。 砂利どころか、かなり急な下りで両脇には草木が生茂り、獣道状態の土の道だ。おまけに昨日の大雨により、地面はグチャグチャのドロドロになっている… 草木の茂りによって、上にある先ほどまで歩いて来た舗装の車道は全く見えない。 前を行くボテン達も、時折、互いに何か声をかけながら必死に進んでいるが、距離をあけて尾行している為、会話の内容まで聞こえない…。 私も自分の音と気配を殺しながら、何とか進んでいた。 「砂浜へ下るのか…?こんな道を通って…いったいどこで何をするつもりだ…」 靴がドロドロになり、さすがに疲れが出始めたその時…! ズルッ! 「うっ!いかんっ!しまっ…」 ゴッ!…バキバキっ… ドサッ。 私は足を滑らせ転倒し、木に頭を強打し仰向けにその場に倒れ込んだ…。 「ううう…しまった…」 頭の強い痛みと、手首の痛み… 手に持っていた袋が、袋の中身のボテンごと貫通して、月明りに照らされ夜風に揺れながら、木の枝に突き刺さっている… …景色が遠のいて、意識が薄れてゆく… …………………
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