プロローグ

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 大学を卒業して五年。  私は小さなアクセサリーショップの店員として、平凡に時を重ねてきた。  寿退社を繰り返す先輩や同期をすり抜けて、いつの間にか後輩までが辞めていく。  ふと気づけば、中堅社員という売れ残りのレッテルが貼られ、今もスーツに身を包んでいる。  まだ店長でもないのに、上司からは不用意に突かれ、見渡せば雛のような若い後輩ばかりに囲まれる。  「定時、定時」と囀る雛たちは、発色鮮やかな化粧品でキラキラと輝く。  そして私は、きっちりした可愛くもない化粧を纏い小言を垂れる。  影で何と言われてるかなんて、かなり前から知っていた。  【お堅いお局様】と、雛は口々に唄う。  アラサーなど、まるで時限の違う話と鷹を括っていたのが懐かしい。  私も直に27歳になる。この五年を考えると、30歳なんてすぐ目の前だ。
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