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開戦からわずか一時間で、官軍の前線はズタズタに分断されていた。
軍の最後尾で戦況を見守っていた官軍大将の曹紀は、苦い顔しかできないでいる。自分も出るか、と思った彼が騎馬にまたがった時、戦場の左端に新手を見つけた。
警戒をうながす間もなく、甲冑の洪水が官軍を側面から襲った。
煉州軍の第二陣である。
防御の手薄な側面を突かれ、官軍はさらなる大混乱を起こした。
完全に勢いづいた煉州軍は、前、横からの猛攻で官軍を平原の奥に押し込んでいく。
曹紀が自らの隊を率いて前線を援護に向かったが、意味はなかった。
「なんだ、これが官軍か」
第三陣の先頭に立った峡英は呆れ果てていた。彼としては、もっと激しい乱戦となって戦線が膠着すると思っていた。これでは拍子抜けもいいところだ。
「まあよい。このまま出陣し、官軍を一人残らず殲滅する」
宣言し、峡英は自ら馬を駆って戦場に飛び込んでいった。
大将の参戦ということもあって、煉州軍の士気はさらに高まった。峡英の前でいいところを見せてやろうと、騎兵も歩兵も、猛然と攻撃を仕掛けた。
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