第一章――煉北会戦

12/17
前へ
/435ページ
次へ
   圧倒的劣勢の中、官軍は曹紀の隊だけが孤軍奮闘していた。曹紀は槍を巧みに操り、煉州兵を一人また一人と確実に倒していく。  曹紀は、向かってきた騎兵に槍を突き込む。穂先は正確に煉州兵の腹を貫いた。それを引き抜いた時、曹紀の馬に向かって誰かが剣を投げた。  剣が馬の首筋に突き刺さる。騎馬が前足を跳ね上げ、曹紀は落馬した。落ちた瞬間、彼は槍を手放してしまう。  立ち上がりながら剣を抜こうとしたが、そこまでだった。  前後左右から煉州兵の槍を同時に受け、曹紀はあっけなく絶命した。  地に伏した曹紀の死体には、手柄を求める兵士が殺到し、首はおろか四肢までが切り取られた。  兵士の波が去った後、曹紀は胴体だけの肉塊と化していた。 「終わったみたいだな」  戦の勝敗は決した。  超水は返り血で身を湿らせていたが、顔には達成感があった。超雪に言われた通り、傷一つ受けずにいられたことに安堵していたのだ。  しかし彼は、すぐに表情を曇らせることになる。 「追撃! 一人たりとも生かして帰すな!」  超雪が怒気を込めた命令を下すと、兵士達が一斉に駆け出した。  
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1140人が本棚に入れています
本棚に追加