第一章――煉北会戦

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   血で作られた川を見ていたら、自分がとんでもないことをしたような罪悪感に襲われる。  だが、これは煉州を慶から解放するための戦いだ。これは正義なのだ。自分に言い聞かせ、超水は本陣に戻ることにした。  ……父上は褒めて下さるだろうか。  大戦果とまではいかないが、二十人以上の兵を討ち取ったのだ。さすがに怒られることはないだろう。      †  本陣に舞い戻った超水は、馬から降りたあとに眉を寄せた。 「なんだ、あれは……」  太守峡英の幕舎(ばくしゃ)の前に、大きな鍋と鉄板が用意されている。  戦勝祝いでも始めるのか。  自分の幕舎に立ち寄ってから槍を置き、兜を外す。汗で濡れた黒髪が、兜に引っ張られて逆立った。  それを手で直しつつ、超水は峡英の元に向かった。  すぐに家臣団が勢揃いし、鍋と鉄板を円で囲む。  超水は円からやや外れ、後ろから眺めることにする。初陣の分際で調子づいていると思われたくなかった。  
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