第一章――煉北会戦

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  「え……」  そのあとの光景に、超水は息を呑んだ。  縄できつく縛られた状態で連れて来られたのは、官軍の兵士だった。三人ほどだが、いずれも若く見える。二十過ぎくらいか。 「皆、今日はよくやった。今より戦勝を祝う。――超雪」 「はっ」  峡英の命令で、超雪は腰の短刀を抜いた。 「父上――」  一体なにを――と言おうとした瞬間、超雪の短刀が捕虜の耳を削ぎ落とした。  耳を刺す絶叫。  捕虜がのたうちまわるが、屈強な煉州兵がそれを押さえつけて封じる。他の二人の捕虜も、顔を青くして動けないでいた。  驚愕の声すらあげられなかった超水の前で、捕虜の耳が鉄板で焼かれる。  鼻を突く異臭が立ちのぼり、超水は思わず顔をしかめる。  頃合いを見て、超雪がその耳を箸で拾った。  そしてそれを、 「食え」  切り取られた本人に突き付けたのである。 「許して、助けて……」  耳のない捕虜は、涙をこぼして懇願した。しかし聞き入れられるはずがない。箸を無理矢理口に突っ込まれ、捕虜は、自分で自分の耳を食らった。  
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