第一章――煉北会戦

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   なんだ、これは……。  超水は思わず一歩後ずさる。  捕虜に箸を向けた時の、あの父の顔。これだけ惨たらしいことをしておきながら、楽しそうに笑っているではないか。  鍛錬の際、厳しい顔つきは幾度となく見てきた。だが、こんなにも狂気に歪んだ表情は見たことがなかった。  もう一人の捕虜は、全身に油をかけられた後に火をつけられた。  最後の一人は、煮えたぎった湯を張った鍋に放り込まれ、最後まで叫び続けながら死んでいった。  それを見て、煉州の家臣達が声高らかに笑う。最高の余興だ、と言う者もいる。超雪もご満悦の様子だ。 「馬鹿な」  これが、解放のための戦いだというのか。  ――違う。  超水は首を横に振った。  思い描いていたのは、圧政に苦しむ民を救うため立ち上がった、誇り高き煉州軍であるはずだった。断じて、こんな狂気に取り憑かれた集団ではない。  超雪の声が耳に入った。 「見たか、あの火だるまになった屑を! 屑が泣き叫んでおったぞ! 新しい発見ではないか!」  父が大笑いしている。超水はうつむいた。  もう、見ていられなかった。  
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