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なんだ、これは……。
超水は思わず一歩後ずさる。
捕虜に箸を向けた時の、あの父の顔。これだけ惨たらしいことをしておきながら、楽しそうに笑っているではないか。
鍛錬の際、厳しい顔つきは幾度となく見てきた。だが、こんなにも狂気に歪んだ表情は見たことがなかった。
もう一人の捕虜は、全身に油をかけられた後に火をつけられた。
最後の一人は、煮えたぎった湯を張った鍋に放り込まれ、最後まで叫び続けながら死んでいった。
それを見て、煉州の家臣達が声高らかに笑う。最高の余興だ、と言う者もいる。超雪もご満悦の様子だ。
「馬鹿な」
これが、解放のための戦いだというのか。
――違う。
超水は首を横に振った。
思い描いていたのは、圧政に苦しむ民を救うため立ち上がった、誇り高き煉州軍であるはずだった。断じて、こんな狂気に取り憑かれた集団ではない。
超雪の声が耳に入った。
「見たか、あの火だるまになった屑を! 屑が泣き叫んでおったぞ! 新しい発見ではないか!」
父が大笑いしている。超水はうつむいた。
もう、見ていられなかった。
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