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「ここが呈州(ていしゅう)の港町か。思ったより静かだな」
潰れかけに思える魚市場や、海産物の市場がむなしくたたずんでいる。人の姿は見あたらない。
潮風を浴びすぎて、柱が腐敗を始めたような店も多数見受けられた。
「さすがの呈州も、皇帝陛下の圧政には参っているとみえるのう」
「呈州に詳しいのか?」
「なに、長旅をして帰ってきたところでな。ずっと呈州に住んでおるよ」
「ならば、どこかに働けそうな場所を知っているなんてことは……」
「わしもあまり詳しくはないが、東の街道を進んでいけば町が見えてくるはず」
「助かるよ。早速行ってみることにする」
「そうか。気をつけてな」
†
煉州軍を抜けた超水は、少しでも遠くに行こうと考えた。
そして、遠方に向かう船を探して乗り込むことにしたのだ。
港に着くと、船は思ったよりもあっさりと見つかった。呈州に向かう船があると言うのだ。
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