第二章――龍角

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   物影から見ていた貧相な青年はため息をついて、背後の女性に向き直る。 「星蓮(せいれん)さん、ここで待っていて下さい」 「で、でも、渠郭翔さんは」  渠郭翔(きょかくしょう)と呼ばれた青年は軽く頷いた。 「僕でも、先生の背中くらいは守れると思います」  後ろから渠郭翔が追い掛けてくるのを確認しつつ、町長である彼――龍角(りゅうかく)は手に力を込めた。  眼前には、山賊の頭領と思わしき人物がいる。 「貴様!」  龍角は、相手に剣を突きつける。獣皮に身を包む頭領は、血走った眼で龍角を威圧した。 「なんだてめぇ」 「町長の龍角だ! お前をこの場で成敗する!」  相手の視線にひるむことなく龍角は答えた。怖くない、と言えば嘘になる。  だが戦わなければならない。「町民を捨てた町長」などという汚名をかぶりたくはない。 「ふん、町長か。この俺様とやろうってか?」  その問いに答えることなく龍角は突きにいった。相手は馬上で身を反らしてかわした後、馬から降りて剣を抜いた。  
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