第二章――龍角

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  「調子に乗るなよ」  相手の言葉に答える余裕はなかった。  龍角は無言で切り掛かり、頭領の剣と打ち合う。  戦い慣れた山賊だけあって、龍角の剣に軽々とついてくる。  龍角は全力で攻撃を加えたが、悠々と受け流された。相手にはそれだけの余裕があった。  相手の心臓を狙って龍角が突きにいく。頭領が上段から剣を振り下ろし、彼の剣は叩き落とされた。  あっ、と反応する間もなく蹴り飛ばされ、龍角は地面を転がる。  直後に渠郭翔が頭領に挑んだが、たった一合で組み伏せされた。 「なんだなんだ、自分から挑んでおきながらこの弱さか」  嘲笑が降ってくる。頭領は渠郭翔の頭を踏み付け、勝ち誇ったように声を張り上げている。  龍角が必死で立ち上がろうとした時、少し後ろから、甲高い女の悲鳴が聞こえた。  振り返ると、恋人である星蓮が山賊どもに捕まって、通りへ引きずり出されていた。星蓮は必死で抵抗するが、男三人の前では無意味な行動であった。  
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