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――誰か、誰か!
腹を蹴られた激痛に、龍角は思うように動けない。
歪んだ視界の端に、星蓮の涙が見えた気がした。
――誰か、助けてくれ!
ここの町民では、山賊に抗えない。立ち上がろうとしながら、龍角は願った。
†
整備された街道を進んでいたら、少し先に町らしきものが見えてきた。
肩に槍を担いだ超水は、自然と早足になる。
町が近づくにつれて、なにやらそこが騒がしいことに気付いた。
今日は祭りなのだろうかと思いつつ、歩を進める。
町に活気があるのはいいことだ。昨日見たような寂れた町ではおもしろくないし、なにより働き口がない。
正直なところ、彼は働かせてくれるのであればどこでもいいと思っていた。
しかし――
「祭りにしては……」
人々の悲鳴が混じっているような気がするのだが。
不安になって早足がさらに速くなり、そして小走りになる。
いつしか疾走していた彼が町に飛び込んだ時、すでに通りは惨劇の渦中にあった。
町民が逃げ惑い、盗賊らしき男達が町を蹂躙している。
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