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「当たってよかった」
超水は、道路に転がった槍を拾い上げる。柄から先端まで血まみれだ。
普通の人間なら不気味がって触らないところだが、血に慣れている超水には気にならなかった。
「そこなお方」
頭部を失った山賊の頭領の死体。それを黙って見下ろす超水に声をかける者がいた。
先ほどまで倒れていた男だった。もう一人の痩せた男もようやく立ち上がったところだ。
「危ないところを、ありがとうございました」
男はきわめて穏やかな口調で言う。
「いやいや、当然のことをしたまでです」
超水も笑顔で返した。
「しかし、恐れ入った腕前にございますな。我々がてこずっていたあの頭領を圧倒し、投げ槍の一撃で倒すとは」
相手は心底驚いている様子であった。
超水は平然として、
「あの程度の男なら、故郷に掃いて捨てるほどいたもので」
言い切った。
「故郷はどちらで?」
「煉州です」
「ははぁ、武人の国から! それはお強いわけだ!」
男がおおげさに驚くのを目にして、超水は内心で苦笑する。
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