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「や、真っ先に目に映ったものですから」
超水は、頭に手をやってわざとらしく笑う。少し照れてしまっていた。
星蓮と名乗った女はゆっくりと顔をあげた。
色白の小柄な女性だった。
豊かにふくらんだ唇、美しく流れる黒髪、なまめかしい指。強さと清楚さを兼ね備えたかのような顔は、二十代半ばというところか。
超水は、なぜだか星蓮を直視できなかった。
……待て。俺はなにを考えているのだ。
大きめに咳ばらいをして、星蓮の勧めた湯飲みを手にとる。星蓮も、超水の向かい側の席に正座する。
茶はちょうどいい熱さだった。
「その、星蓮殿は龍角殿とはどういうご関係で?」
「はい、恋人……というところでしょうか」
率直な返答に、超水は茶を吹き出しそうになった。
正直なところ超水は、星蓮に一目惚れしそうだったことは間違いない。
早いうちに恋人がいるとわかってよかった。
それだけの会話で、超水は平静を取り戻す。すぐ横で、星蓮も湯飲みに口をつけた。
そんな動作の一つ一つが実に優雅である。
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