第二章――龍角

13/30
前へ
/435ページ
次へ
   ……良家の生まれだろうか。  超水が考えていると、ぱたぱたという慌ただしい足音がした。龍角が帰ってきたのだ。 「やぁ、超水殿。招待しておきながら席を立ってしまい申し訳ございません」 「いや、お気になさらず」  龍角は超水の正面に座り、星蓮から湯飲みを受け取る。龍角と星蓮が、並んで超水を見ている。居心地が悪い気がした。  一息ついて、龍角が口を開いた。 「呈州を訪れたことは?」 「今回が初めてです」 「そうでしたか。自然が美しいでしょう」 「ええ、見事なものです」  当たり障りのない会話がしばらく続き、超水も自然な受け答えをする。  龍角の声量は大きすぎず小さすぎずで聞きやすく、はっきりとしているのでわかりやすかった。 「それで超水殿は、どういった用件で呈州に?」  何気ない一言だったが、超水は一瞬身を強張らせた。どう答えればいいのかわからなかったのだ。  間を置くために湯飲みを手にして、時間をかけて一口だけすする。その間になんとか思いついた。 「なんと言いますか、勘当されまして。行く宛もなく船に乗ったらここに着いたのです」  
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1140人が本棚に入れています
本棚に追加