第一章――煉北会戦

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       †  超水は父の部隊に組み込まれていたため、必然的に先陣になった。先陣は真っ先に敵とぶつかるため、危険が大きい。  逆に考えれば、もっとも早く手柄を挙げることもできる。  煉北に布陣した煉州軍は、寒気に身を震わせながら官軍を待った。  陣の先には、芝に覆われた平地がひたすらに延びている。  峡英は敵の出鼻をくじくため、騎兵を前線に集めた。超水は騎兵の最前列、一番左端に配置された。出遅れても隊列に影響が出ない位置だ。 「やっておるな」  布陣二日目。  陣の外で槍の鍛練をしていた超水は、父の超雪に呼び止められた。  超雪は兜をしておらず、鎧だけという出で立ちである。金属のこすれる音と共に、父は超水の横に立った。 「はい。こうして槍を振るわねば、体がなまってしまいそうで」 「当然だ」  超雪はあごひげを撫でた。  煉州は〈武人の国〉と呼ばれるほどに武芸の盛んな州だ。  兵馬は精強、官職に就いている武将達は、誰も彼もが一流の武芸者である。  
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