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「別に子ども向けに企画組むのはいいんだよ。ただ、問題は――」
「私達が宇宙に興味を持てるようなものがないってこと、ですよね?」
部長はなぜか意外そうな顔で私を見て、本当に珍しく微笑んだ。
……え?
「なに見てんだよ」
「み、見てません!! 何言ってるんですか! それより、議論、議論!」
「ああ、そう、軽部が言うとおり、大人向けの企画が何もない」
「うん、確かにホームページ見た限りでは何もなかったし、そこまで本腰入れてやってないんじゃないかな?」
「でもそれだとけっこう問題ですよね」
「今の子どもたちは宇宙にキョーミ持てるかもしれないけど、オレらみたいにこの年で関心ないやつは一生関心を持たないままかもしれない。マジでキョーミないし」
「じゃあ、具体的にどうしたらいいんでしょう? 大人向けの企画といっても、あんまり聞いたことないですし、科学雑誌やなんかはありますけど」
「お前が面白いと思うのは?」
お前呼ぶな!
「えっと、知識というよりも体感するような感じがいいですかね? いや、でもそれだとあんまり子ども向けと変わらなそうだし、うーん」
「……知識だけでも……面白い」
それはヒロだからでしょ! ……ん?
「そう言えば、ヒロはどうして宇宙が好きなの?」
「……難しい」
確かに。改めて自分の好きな理由を問われても、なかなか答えにくい。
「……だけど……不思議……だから」
不思議? 教科書にも載っている宇宙が?
「……宇宙は……まだ未知……知ってるだけ」
「……見たことはないってこと?」
「……見たことも……感じたことも……でも……望遠鏡使えば……見える」
ああ、そっか、だから面白いんだ。知識として知っていても、見たことも触れたことも感じたことすらない宇宙が、でも、確かにそこにあるってわかることが、そしてどんどん宇宙は大きくなっていく。人類の発見によって。
それがヒロの面白い、ってことか。
「だけど、このお二人のように教科書の知識ばかりで宇宙をとらえていたら、とたんに面白くなくなるんだね」
私は部長と顔を見合わせた。
悔しいが、この宇宙に関しては、部長と同じだと言わざるを得ない。……なんて、絶対嫌!!
「さて、ここらへんでいいだろ。あと、具体的にどうするかは、オレらが考えたってイミないことだし。宇宙の日を通して宇宙の面白さをなんとなく知りました。これでいんじゃね?」
私達3人は部長の言葉にうなずき合う。
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