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部室のドアを開けると、すでに私以外の部員全員が揃っていた。
窓際に置いたリクライニングチェアの、リクライニング機能を全く使わないで、イスの端にちょこんと座って本を読んでいるのが、只野裕子。一年、雑用兼書記。
あと一分もすれば、部活の活動時間だというのに、イライラするほどマイペースにテレビ画面に向かって、レベル上げとやらを進めているのが、村瀬雄彦。二年、部長。
テーブルの前に置いた四つの一人用ソファの一つに座り、その二人をニコニコしながら眺めているのが、米谷亮二。二年、副部長。
この三人と、たった今部室に入ってきて、なんらいつもと変わらない部内の様子に呆れている私、軽部友希乃、一年、一部員とを合わせて、この浦見ヶ崎高校記念日研究同好会のメンバー全員だ。
私が入ってきたのに気づいて、部長以外の二人が挨拶をしてくれた。
そして、部長以外の二人は、ブルーのテーブルの側に並べたソファへと集まり、筆箱を取り出すなど、活動の準備を始めた。
部室の白壁に取り付けたシンプルな円形の時計が12時ちょうどを指した。
私もソファへと座り、こほんと咳払いをした。
「始めますよ。部長、席について下さい」
返事はなかった。その代わりにピコピコと指を動かす音が聞こえる。
「部長!」
声を荒げると、いつもの通り、部長はのそのそと立ち上がり、テレビ画面を消して、私の横のソファへと座った。
「いつも言っていますが、ちゃんとして下さいよ。今日は、いつもと違って夏休みの貴重な1日なんですから」
バリエーションがいくつかあるけど、これもいつもの台詞。
「へいへい」
これも。ごわごわとした頭を掻くのも、全部。
お願いだから、いい加減にして。
と言っても全く聞かないので、とっとと始めることにしよう。
雑用兼書記の只野裕子もといヒロが、記録ノートを広げ、眼鏡をくいっと上げた。
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