12/25 クリスマス

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と、いうわけで。珍しい部長の計らいのおかげでとりあえずの部活動ができることになった。 いつもの席+一人のリクライニングチェアでオードブルが載せられたテーブルを囲む。ケーキはまだ冷蔵庫に待機中だ。 みんなに今回のレジュメを渡すと(先生の分は用意していなかったので、米谷先輩と一緒に見てもらうことにした)一つ咳払いをして議題に入った。 「えー、今回はクリスマスを取り上げたいと思います」 「おう」 「今は日本全国で当たり前のように親しまれている行事ですが」 「そうだな」 「元々はヨーロッパやアメリカなどのキリスト教圏で行われていた行事なんですね」 「うんうん」 「……本来はイエス・キリストの降誕、これは誕生と置き換えてもいいと思うんですが、降誕と呼ばれることが多いです」 「降誕ね」 「…………で、そのイエス・キリストが降誕した日が今日12月25日とされ、その日をお祝いの日とすることにしたんですね」 「なるほどな」 「………………クリスマスが日本に来たのは意外に昔で、1552年に今の山口県に宣教師コメス・デ・トルレスたちが日本人の信者を招いて行ったのが初めてなんですね」 「すげー昔だな」 「……………………はい」 「ん? どうした?」 どうしたってそりゃあ。 「なんか今日部長変じゃありません?」 「おいおい、いつもとかわんねーだろ」 いやいや、『おいおい』とか使わないですよね。それに合いの手だっていつもいれんだろ。 これはもしや……。 「なにか企んでません?」 「何言ってんだ。なんもたくらんでねーよ」 ウソだな。その不自然な笑顔がそれを物語っている。 だけど、どうしたもんか。 「いいから次いけよ次」 「早くしないと遅くなっちゃうからね」 米谷先輩にせかされるとやるしかないじゃないですか。 とりあえず、部長の企みは脇に置いといて、議論に集中することにした。
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