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いつもなら、家で家族との団らんを楽しんでいるはずだったのに。テレビのクリスマス特番を見ながら、どうでもいいようなことを話したり、笑い合ったり、心からくつろげるまったりとした時間を過ごしているはずなのに。
なのに今、友希乃はここにいるのだ。どうしようもなくだらしなくて突っ込みどころ満載の、この部長率いる記念日研究同好会に。
いくら普段から容赦のない突っ込みをしているからといって、友希乃は決して気を遣っていないわけではない。
言っていいコメントとダメなコメントをきっちり使い分けている。自分が一番言いたいことを心に留めて。
だから、どうしても部活は疲れるし、長い時間活動したくないと思ってしまうのだ。
「軽部さん、話聞いてる?」
袖口の少しキツい言い方にはっとして、友希乃はクリスマスに飾り付けされた部室へと戻ってきた。
新作案内などが終わり、映画本編が始まろうとしている。
「えっと……はい、聞いていますよ」
まだ上手く働かない頭を軽く振って、タイムスリップしてしまった過去の情景を消す。
「大丈夫? 疲れてないかい?」
「いえ、全然大丈夫です!」
友希乃は空元気と悟られないように、いつもの笑顔を取り繕った。
「やっぱり、米谷君は優しいね~」
「そうですよね。そこで寝てる部長とは全然違いますよ!」
三重の笑い声が部室に溢れた。
これでいいんだ。こうしていれば、乗り切れる。……あとでスゴく疲れるけど。
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