番外編:クリスマスパーティー

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「僕も一緒にやっていた時期があったんだけど、全然歯が立たなくてね。雄彦は巧すぎた」 昔を振り返るように、米谷の視線は天井へと上がった。 「それが災いしたのか、他の原因かはわからないけど、雄彦はここのサッカー部で――」 「サッカー部がどうかしたのか?」 友希乃はびっくりして肩を震わせた。 今の今まで眠っていたはずの部長が急に起き上がってきたからだ。 絶妙なタイミング過ぎて、狸寝入りしていたのではと危惧してしまう。 「で、サッカー部がなんだって?」 そういった村瀬の語気はいつもより荒い。 友希乃は笑顔をピッタリ貼り付けながらも、内心恐怖でいっぱいだった。 バレたらどうしよう、怒られたらどうしよう、嫌われたらどうしよう、という具合に。 「いや、少し昔話をね」 「昔話?」 「そ。ただの昔話」 「そうか。なら、そろそろ解散にしようぜ」 米谷が微笑み、つられるようにして村瀬も笑った。そして、場の空気は何事もなかったかのように元に戻っていた。 「さて、片付けんぞ」 「部長、その前にやることがあるんじゃなかったっけ?」 「ああ」 思い出したようにそううなずくと、村瀬はソファの横に置いた自分のカバンを開けた。 「軽部」 「は、はい」 まだ緊張感の残る友希乃は慌てて立ち上がった。 「手を出せ」 言われるままに両手を出すと、優しくその手に何かが置かれた。 村瀬の手がゆっくりと離れ、そこにあったのは、赤いチェック柄の包装紙にくるまれた四角い箱。 「え? あの、これは」 「見りゃわかるだろ、プレゼントだよ、クリスマスプレゼント」 村瀬はめんどくさそうに髪をかいた。いや――あるいは照れ隠しか。 友希乃は硬直したまま、じっと自分の手にある小さい箱を見つめていた。 胸のあたりが火照ったように熱く感じる。 「おい、勘違いすんなよ、みんなの分もあるんだからな」 「わ、分かってますよ! 部長のことだからなんか変な物入ってるんじゃないですか!? というか、部長が部員にプレゼントなんて当たり前じゃないですか!!」 当たり前じゃないとわかっていても、変なことを言っていると思っていても、なぜだか口から飛び出る言葉を止めることができなかった。 「ああ、もう! 先に片づけ始めますからね! 早く帰りたいんで!!」 友希乃は、そう言って一人後片付けを始めた。
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