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レジュメの一番上から説明していく。
「8月15日、終戦記念日。正確には『戦没(没は難しいボツ)者を追悼し平和を祈念する日』とされていまして、毎年この日に政府主催の全国戦没者追悼式や、政治団体、NPOによる平和集会が行われています」
「言われてみれば、確かに毎年ニュースで見る気がする」
見てるんです部長。あなたが思っている以上に、みんな関心を持ってるんです。
「僕は全国戦没者追悼式しかテレビで見たことないけど、各地でいろいろやってはいるみたいだね。テレビでも特集組まれるし、やっぱり関心は高いんじゃないかな?」
さすが副部長。部長とは違っていいこと言います。
「ヒロは?」
名前を呼んだだけでビクっとなるヒロは、ゆっくりゆっくりと言葉をつなげていく。
「……私は……その……好きかも……」
人より倍時間をかけて、人より3分の1くらい内容は少ない。
そして、言いたいことを探らないといけない。
「好きって、戦争の特集とかが?」
「……うん」
「どういうところが好きなんだい?」
米谷副部長が優しい口調で質問する。部長のように乱暴だと、ヒロは怯えて何も言えなくなってしまうのだ。
「……ドラマ」
「人間ドラマってこと?」
ヒロはこくりとうなずいた。
「戦争を通じて引き裂かれたその人の人生が、あんなふうになって、こんなふうになって、でも最後はこうなって、戦争は恐ろしい、二度と起こしてはならない、というような?」
ヒロはこくりとうなずいた。
「……戦争は……よくない」
「確かに戦争はよくないよね。それを思い出すためにも、この終戦記念日って大事な日だと思います」
こんな感じでまとまるでしょう。誰がどうやったって、これ以外の結論は出ない。
「ちょっと待てよ」
そんな私の当たり前を吹き飛ばす存在がいた。
「他の国にとってはどういう日なんだ? それに、そもそも戦争戦争って簡単に言うけど、そんな簡単なもんじゃないだろ」
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