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セミの鳴き声と共に夏休みはとっくの昔に終わりを告げ、毎日袖を通す暑苦しい制服にそろそろうんざりしてきたそんな頃だった。
あの口を開けば「めんどくさい」と発する極度の面倒くさがりな部長から、久しぶりに部員召集のメールが届いたのだ。
久しぶりと言っても部室に全く顔を出さなかったわけではない。というよりも、部室には二日に一回のペースで通っていて、何をするでもなくそこでしばらくの時間を過ごしたりする。
そしてたいていはそこに誰か部員がいて、それぞれの趣味を楽しんでいたり、たまには話をしたりしている。
だから、『部活動』として部室に集まるのは、前回の8月15日以来約1ヶ月ぶりだったりする。
そう1ヶ月ぶり、なんだけど。
私は例の如くため息を吐いた。
「だから部長。早く席に着いてください。今日はわざわざ休日に来てるんですから」
何回言わす気だ。
「えー」
ピクピクとこめかみの辺りが動く。
「『えー』じゃないです。子どもじゃないんだから」
「じゃあ、うー」
「……部長、電源切ってもいいですか? いいですね。切りますよ」
部長は立ち上がると、テレビの画面を消して私の横の一人用ソファーに座った。
「毎回、言わせないでください。疲れますから」
「毎回? いつも違う返し方してるだろ」
そろそろグーで殴ってもいいだろうか。
「お二人さん。もういいかい?」
気持ち悪!
「あの、先輩。部長と同列に扱われるのはちょっと」
「そうだぞ、亮。こんなゲームもやったことないような堅物と一緒にするな」
米谷先輩はニコニコ笑顔をさらに笑顔にした……ような気がする。笑顔という仮面をつけているみたいにこの人の表情は、笑顔から崩れることはないのだ。
「ほら、今意見が一致した」
あっ、本当だ。
いやいやいやいやいや。一致してません、これっぽっちも!
「そんな感じで今日の記念日も意見が一致するといいね」
ぐっ……。部長との一致の件は否定したいが、このまま議論に入りたい。葛藤だ。ああ、葛藤だけど、議論が優先。我慢しろ、私!!
意識を他に向けようと今日の資料に目を移す。米谷先輩の資料は図や絵も混じり、いつもながらわかりやすく作られていた。
そんな中、一際目を引く絵を見つけた。
なんだこの、全身青色のキャラクターは。
「ああ、それね。宇宙の日のマスコットキャラだよ」
記念日のマスコットキャラクター?
「さて、今日のお題はみんなが大好き宇宙の日です」
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