失踪

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困っていたら 伯母さんが背中のファスナーを閉めてくれた。 ついでに白い薄い布の (あとで知ったけど、シフォンとかいうらしい) スカーフを緩く巻き巻きされた。 伯母さんは 満足そうにボクを見ながら満面の笑みを浮かべると 自分の腕にはめてる高そうな時計を見た。 そうしてボクに目を向けて 顔を近づけて声を潜めながら言った。 「手短に言うわ。 千華の身代わりをして。 これから撮影用のスタジオに入るけど、 挨拶は おはようございます、だからね。 それから、あなたが身代わりをしていること バレないように細心の注意をしてちょうだい。 事情を知っているのは私と、 千華のメイクと衣装を担当している3人だけよ。 いいわね。」 「――っちょっ」 「あぁ、それからあまり喋らなくていいから。 千華もあまり話さない方だけど 良く顔を合わせる人にはさすがに冷や汗ものだから。 …そうね、 声は…咽が痛いと言うことにしましょう。 さぁ、着いたわよ。」 事情ってなに? って質問をする間もないまま、 家から半誘拐された時と同じように 強引に車の外に連れてかれた。 ………なんか、 今……… とんでもない説明しなかった?
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