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「はい、次、その隣読んで」
隣の列の生徒と入れ代わりで座り、オレは教科書を閉じた。
オレが読み上げた教科書の続きを、隣の列の生徒が棒読みで読むのを聞きながら、俺は机に上半身を寝かせる。
こんなにクソ暑いのに、初日から授業なんて始めるんじゃねぇよ。
『コラー、寝ちゃダメですよー』
「黙れ」
前の席に座る瞬花が、嫌がらせのために振り向きもせずオレの机にピンクに光る指輪を落とした。
一応声を控え目にした白桃が、オレの眠りを妨げる。
『ダメですよー単位取れないですよー』
「いいんだよ、一般AI学も応用AI学もオレは必要としてないからな」
他の生徒みたいに、オレは真剣に授業を聞く気すらなかった。
もう単位はあきらめている。
多少勉強したって…何故か他の生徒達みんながAI学を好んで勉強するため、そこそこの点は取れても単位は取れない。
なら初めから勉強する気なんてない。
『鳴世さんもいつかAIを持つんだから勉強しなさーい!後悔するよん?』
「しねぇーよ、絶対に、死んでもAIと戯れる気はないし、AI学を学ぶ気もないね」
「ほーいい度胸だな関谷 鳴世君」
・・・嘘だろ。
上半身を机に寝かせたまま、目だけ見上げると、AI学専門教師であり、この教室の担任教師である女教師ユミヅケが立っていた。
その目は吊り上がり、完全にキレている。
『にゃは』
「にゃは、じゃねぇーよテメェのせいだぞ」
「いつまで喋ってる!」
「イテッ!」
頭上を教科書の角で叩かれ、オレはピンクの指輪と、前列で肩を震わせて笑いそうになるのを無理矢理押し殺している瞬花を睨み付けた。
まあ、こんなこと毎日の習慣みたいなもので…哀しいことにもう慣れ切ってしまったが。
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