はじまりの結婚式

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「勤務時間でもないし、もう結婚式を挙げた仲だから言うけれど、あなたが今生きて私とこうやって話しているこの現実。これって医学的にはあり得ないことなのよ。あなたは医学的には、もうとっくに亡くなっていて然るべき人。でも、このあり得ないことをあなたは現に起こしてる」 「僕は殺せども死なない悪魔かい?」 「そうじゃない。あなたはただの弱い人間。でも、ただの弱い人間が奇跡を起こしているのよ。オーケー?」 と言って彼女は迷いのない瞳で真直ぐに僕の目を見つめた。彼女はあの彼女か?こんなに力強く僕に語り掛ける彼女を僕は初めて見た。 「君は強い人間だよ。こんな僕と結婚式を挙げるくらい強い人間」 「私が強い人間だと言うのなら、あなたが強い人間にしてくれたのよ」 「まさか」 「私はあなたを信じられる。でも、あなたはあなた自身を信じていない。奇跡的現実を起こしてる張本人が一番奇跡と自分を信じられないなんて不思議な気持ちになるわ」 と言って彼女は天井を仰いだ。その彼女の顔を僕はベッドの枕の位置から見上げていた。見上げた彼女の顔がやたらと美しく見えた。  彼女は話を続けた。
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