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「なんだ、バイブルなのか。僕はてっきりカルテかと思ったよ。死期間近の僕みたいな患者のカルテともなると、それ位分厚い上に立派なハードカバーまで付くんだろうなってさ」
「はっはっはっ。浜田さん節も絶好調ですね。医者の立場でも神父役の立場でも今日は安心して浜田さんを見ていられそうです」
と院長は満面の笑みを輝かせながら言った。
「なあ、院長さん。どうやったのかは知らないがスタッフ達が赤い絨毯を調達して、曲がりなりにもヴァージンロードを用意してくれたんだ。本当に“曲がり”なりにもね。本物の神父さんを用意しろとまでは言わないけどさ、せめて院長さんも神父の衣裳ぐらい用意して神父のコスプレをして立ち合って欲しかったね。分かるだろ?いつもの白衣を着た院長さんがそこにつっ立っていたら結婚式の雰囲気がぶち壊しだってことくらい。病院スタッフが一所懸命に雰囲気作りをしてくれたのにさ。結婚式でそれなりの格好をした神父さんがいるかいないかでリアリティが随分違ってくるんだ。それに白衣じゃあ、新郎新婦の白い衣裳とも色が被っちゃうし。気が利かないよなぁ、まったく。院長さんに関しては、その手にしているバイブルがせめてもの救いだな、唯一の」
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