はじまりの結婚式

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 花嫁が病室の入り口までやってきた。  新雪のような純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女。そのヴェールの奥で輝く彼女の瞳と僕の目が合った。彼女はヴェール越しに僕へ向かって、はにかんで見せた。僕は思わず吹き出してしまった。なぜなら、彼女の胸元と頭に折り紙で急遽作ったであろう赤い花が咲いていたからだ。 「それが、さっき君が言ってた紅白ジョークってやつかい?」 「ええ。そうかもね」 「笑えるよ」  彼女は父親役の外科部長と腕を組んでゆっくりとヴァージンロードを歩いてきた。神父役のタヌキの前で二人は離れ、外科部長は僕とタヌキに会釈をして病室を出ていった。そりゃそうだ。こんなおままごとに長々と付き合っていられる程暇じゃないだろう。  さっきまでナース服姿で僕に白いタキシードを着せてくれていた彼女は、今は花嫁姿になってベッドに仰向けに横たわる僕に近づいて、折り紙でできた赤い花を僕の白いタキシードの胸元に飾った。 「これで吐血しなくても紅白タキシードね」 「ああ」 「あのね、私の両親に今日のことを前から話していて……、今の今まで待っていたんだけど……」
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